ビットコインとは仮想通貨の一種で、現在発行されている仮想通貨の中でもっとも多く取引されています。
このビットコインが法定通貨と違うところは、国家などの特定の発行者や管理者が存在しないことです。
では、どうやってビットコインは通貨として認められ、法定通貨と同様にモノの売買ができるのでしょうか。
本記事では、ビットコインがどうして作られたのか、また、実際の取引方法の仕組みはどうなっているのかについて解説します。
ビットコイン誕生のキッカケとは
ビットコインの開発のキッカケとなったのは、2008年9月に起きた「リーマンショック」だといわれています。リーマンショックとは、アメリカの大手投資会社「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻したことによる、世界的な株価の急落が起きた出来事です。
当時、リーマン・ブラザーズは低所得者向けの住宅ローン(サブプライローン)を証券化して販売していましたが、住宅バブルの崩壊による地価の下落から多くの人がローンの返済ができなくなりました。
これによりリーマンブラザーズは、約64兆円という負債を抱え空前の経営破綻に陥ったのです。その影響は全米に及び、多くの金融機関に経営破綻の危機を招きました。そして、この米国発の金融危機は世界中に広がり、世界経済に深刻なダメージを与えたのでした。
1.中央集権型から分散型への移行
この事件の根本的な原因は、金融業界が中央集権化されていることが問題でした。金融業界も政府も、景況によって地価が変動することを知りながら、自らの利益のために返済能力が低い層に多額のローンを貸し付けてしまったのです。
この出来事で再認識されたのは、既存の金融システムは、銀行や法定通貨を発行する国家や中央機関によって支配されており、一部の権力者が失敗を行えば、経済に大きなダメージを与えてしまうということでした。
そこで、サトシ・ナカモトはこの問題を解決するために、中央集権型ではない分散型の金融システムの開発を試みました。その結果、このプロジェクトによって生み出されたモノが仮想通貨のビットコインです。
2.中央集権型金融システムの問題とは
法定通貨は国家が通貨発行権を独占し、国内外の景況感を見ながら通貨量をコントロールしています。例えば、日本なら日本銀行が円を、米国はFRB(連邦準備理事会)がドルを発行しています。
日本円も米国ドルも法定通貨の発行量は政府や中央銀行などの中央機関の裁量によって、恣意的に決定されます。彼らは、通貨を多く発行して物価を上げたり、通貨の発行量を少なくして物価を下げることが可能です。
このように、国民の経済活動は一部の権力者によってコントロールされているといっていい状況が続いています。しかし、中央機関も大きな失敗をすることがあります。その典型が1980年代後半に起きたバブル景気です。
この日本のバブル景気も米国のリーマンショックも金融システムの中央集権化が原因でした。この2つの例のように、法定通貨は中央機関が通貨を管理し、経済をコントロールするため、彼らが失敗を犯すと国家経済に大きなダメージを与えることになります。
*分散型システムのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
一部の権力者の暴走を防げる | 意見が別れた時にまとめ役がいない |
簡単にルールを変えることができないので、将来の見通しが立てやすい | 急なルール変更ができない |
ルールの変更は多数決で決める | 取引処理に時間がかかる |
全員で監視するのでセキュリティが高い | 全ての取引が見られてしまう |
通貨を銀行ではなく自分で管理できる | 盗難・紛失の保証がない |
3.法定通貨とビットコインの違い
法定通貨は国家の信用性によって価値が決まります。例えば、日本が米国から何かを輸入する場合、日本が米国からどの程度信用されているかによって支払う額は違います。
一方で、ビットコインは発行量を約2100万コインに上限設定することで通貨の価値を決めています。また、民主的な分散型のビットコインは、中央機関に管理を任すのではなく、それぞれの利用者が監視することでセキュリティを保っています。
サトシ・ナカモトらのビットコイン開発者は、こうした仕組みを作り国家が通貨発行権を独占する中央集権型ではない、民主主義的に管理された通貨発行の概念を確立させたのです。
P2P方式で実現したビットコイン
では、具体的に仮想通貨はどうやって生まれたのでしょうか。
それは、インターネット上で暗号技術について議論してしている中で、サトシ・ナカモトと名乗る人物がP2P方式という技術を使って仮想通貨を作ることを提案したのがキッカケでした。
P2P方式とは、ネットワークに参加している人たちが、クライアント・サーバーシステムという、特定のクライアントやサーバーを介した通信方法ではなく直接通信するプロトコルのことです。
通常のインターネットはコンピューターとコンピューターの間にサーバーがあり利用者の情報を管理しますが、P2P方式では同等の機能を備えたコンピューター同士が直接やり取りをします。
こうして構築されたP2P方式によって作られたビットコインは、法定通貨と違い金融機関の介在なしに利用者同士がオンライン決済をすることを可能にしたのです。
ビットコインは仮想通貨の基軸通貨
現在、仮想通貨と呼ばれている通貨は、およそ20,000種類といわれています。その代表的な存在がビットコインであり、もっとも多く利用されている仮想通貨です。
現実に流通されている法定通貨ではドルが基軸通貨ですが、仮想通貨ではビットコインがそれにあたり、仮想通貨を交換する際にはほとんどの場合はビットコインで行われます。
仮想通貨の技術はビットコインのために開発されたものですから、ビットコインが基軸通貨になるのは当然のことといえるでしょう。
ビットコインの取引方法
ビットコインの取引は全てインターネットで行われます。法定通貨のように特定の管理者がいない代わりに、利用者全員が取引を管理し、取引の承認やルールを決めています。
ただし、個々のユーザーが全員参加することは不可能ですから、取引所やウォレット事業者、マイナーが主に検証します。ここでいうマイナーとは、マイニングを行う人のことです。
ビットコインはオープンソース(公開資料)のプログラムによって供給が自動的に制御され、整合性を保つために設計されています。ビットコインは取引ごとに履歴が追加され、その都度公開されます。
ビットコインの利用記録
それでは日常の送金シーンを考えてみましょう。現在の支払い手段は現金か電子マネーで、引き落としは銀行を経由するのが主流です。銀行預金の場合、銀行の基幹システムが会計処理を行い銀行利用者の預金残高を操作、記録します。
一方でビットコインは、受け取りから支払いに至るまで全て「ウォレット」というアプリが行い、銀行の台帳の機能はビットコインのコア技術である「ブロックチェーン」が行います。
ウォレットからビットコインを送ったり、受け取ったりすると全ての取引がブロックチェーンに記録されるため、やり取りの全てが利用者に公開されます。
これにより、利用者全員がブロックチェーンにある取引の記録を見ることが可能なので、その取引は全員に確認され承認されたとみなされます。これが、一部の銀行だけがデータを管理するのとは違った分散型のシステムなのです。
逆に、ブロックチェーンに取引の事実がなかったということも利用者全員が確認できるので、不正な取引を監視することも可能です。
このようにブロックチェーンは過去の取引の台帳のようなものがオンライン上で全ての利用者に公開されるため、マネーロンダリングなども比較的容易に見つけることができます。
まとめ
サトシ・ナカモトが目指した分散型金融システムはビットコインを作り出し、今までの通貨に対する概念を覆しました。これで、通貨は国家のような中央機関だけが発行するものではなくなったといえます。
現在、自国で通貨を発行せずにビットコインを国の法定通貨として採用している国はエルサルバトルと中央アフリカ共和国の2カ国です。
どちらの国も国内の法定通貨の信用が下がり、国家間の取引に支障をきたしたことが、ビットコインを法定通貨に採用した理由です。
世界にはこの2カ国以外にも、自国の法定通貨が世界市場で信用を失ってしまい、自国の法定通貨では経済が成り立たない国が多く存在します。
現在、サトシ・ナカモトが作った分散型金融システムであるビットコインは、こうした国の経済を立て直す金融システムとして機能しつつあり、今後も多くの国が法定通貨として採用していくことでしょう。
ただ、今後は中央集権型金融システムもネガティブな面を改善する可能性もあります。
どちらが優れているのかは現時点では分かりませんが、ビットコインが今後も世界中に広がっていくことは間違いなさそうです。
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